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臨床検査とは?
臨床検査とは?
検査とは「ある基準をもとに,異状の有無,適不適を調べること」で,このように辞書にかかれています.日常生活の中のさまざまな「こと」や「もの」に対しても(たとえば車とか食品なども含めて),ある基準をもとにして異常がないか,適切かどうか検査が行われています.
特に人体に対して行われ,血液・尿・便などを調べたり,脳波・心電図などを測定したりする検査のことを臨床検査といいます.その目的は,「健康状態を知る」,「異常の原因を調べる(病気の診断)」,「治療方針の選択する」,「治療状態を確認する(効果判定)」などさまざまで,必要不可欠な情報です.
(1)臨床検査の種類
(2)臨床検査が行われる病院内の部署
(3)検体検査について
(4)生理(機能)検査について
図 自動分析器
(1)臨床検査の種類
次のように大別されます.
検体検査:人体から採取した血液や尿,便,体液,組織などの検体を分析します.
生体検査:直接人体を調べます.
生理(機能)検査… 心電図や脳波,超音波や呼吸機能検査
臨床検査以外にも,体を調べる検査として下記のようなものがあります.
放射線関連検査… X線を使ったレントゲン検査,CTなどの検査やMRI検査,核医学検査(放射線同位元素(アイソトープ)を用いたRI検査)など
内視鏡検査… いわゆる胃カメラなど上部消化管内視鏡検査や大腸鏡などの下部消化管内視鏡検査,このほか気管支内視鏡,胸腔鏡,腹腔鏡,膀胱鏡,関節鏡検査など
(2)臨床検査が行われる病院内の部署
検査部,輸血部,病理部などの部門で,臨床検査技師という国家資格を持った専門職および医師(臨床検査専門医)が行っています.診療を担当する医師の指示に応じて,採血や心電図などは看護師や臨床検査技師が行うこともあります.
検査部… 主に採血やその分析を行う検体検査と生理検査
輸血部… 輸血に関する検査(血液型や輸血のために行われる検査など)
病理部… 採取された検体から顕微鏡標本を作製し,細胞・組織の異常(良性・悪性)の診断を病理医が行う病理検査,
各部門には,専門の技師,専門医などが所属,勤務しており検査の実施・報告がなされています.
医師や検査技師など人員や施設に限りがある病院では検査できる項目や規模も限られてくるため,やむを得ず検査後に採取された検体を適切な検体管理(温度や時間などの保存条件)・搬送により,検体検査の一部またはすべてを外部機関に委託し病院外で検査する場合もあります.但し,検体採取の際に行われる採血や検査などは医療行為であり医療機関でしか行えません.
(3)検体検査について
検査を行われる検体には,血液だけでなく,尿や便,喀痰,脳脊髄液,胸水,腹水,唾液や胃液など体のあらゆる部位から採取した分泌液や体液,癌細胞などを調べるときに採取した体の一部(細胞・組織)などです.検査のためにこれらを採取する方法には,直接注射針を血管内,体腔内,臓器などに穿刺して得る方法,粘膜や体表,また患部などから体液をぬぐい取る方法,内視鏡検査や手術時に検査したい部位や病変部を切り取る方法などがあります.
検体検査の中で,血液検査と尿検査が広く行われています.特に,血液を調べることで得られる情報は膨大です.血液は,細胞成分と液体成分に分けられて検査されています.
血液細胞成分(血球)… 赤血球,白血球,血小板など血球を調べます.
液体成分… 水分が主成分で,そこに含まれているたんぱく質(凝固因子,アルブミン,グロブリン,酵素やホルモンなど),糖,脂質,電解質などを検査で調べます.
項目に関しての詳細は,東京大学医学部附属病院検査部 基準値表をご参照下さい.
血液の中でも測定したい対象によってさまざまな採血管を用いて採血を行います.血液は凝固する性質上,検査目的に応じて採血管など使いわけないと正しい検査ができないためです.
検査部の中には,さまざま部署がありそれぞれの検査を行っています.
血液形態検査室:血球の数,形態の観察
凝固検査室:凝固因子など血液凝固機能
生化学検査室:血液や尿など液体成分に存在するたんぱく質,酵素,ホルモン,電解質や血糖などの濃度
免疫・血清検査室:内分泌・腫瘍マーカー
遺伝子検査室:感染微生物の遺伝子や悪性腫瘍の性質を調べます
微生物検査室:痰や血液などから感染している微生物を明らかにするなど
これら検査室で働く臨床検査技師は,機械での測定だけでなく,細胞の形態を見る検査,手作業で行わなければならない検査も数多くあることや,機器が正しく動いているのか,採取された検体は適正か(採取・保存方法や検体の状態の確認,病気の状態との結果を検証)どうか管理・確認すること,臨床医との話し合いなどから医療への貢献・参画することなど,専門性や技術と経験を生かしてサポートを行っています.
図 血液の成分
(4)生理(機能)検査について
生理機能検査は,医療機器を用いて体の構造や機能に関する様々な情報,特に循環器や呼吸機能,脳・神経系の機能の状態を調べる検査です.
電気生理学的検査… 心電図や脳波,筋電図など
超音波検査… 心臓や肝臓などの臓器や,血管などの画像診断
呼吸機能検査… スパイロメータやパルスオキシメータなど肺の機能の検査
心電図検査は,心筋の虚血(狭心症や心筋梗塞),不整脈などの検査目的に測定される検査です.ベッドに寝た状態で両手首・両足首・胸部に電極を付け,心筋の働きにより生じたわずかな電気によって心筋の状態を観察する検査です.運動を行いながら心筋の状態を見る運動負荷心電図検査(トレッドミル運動負荷試験)などを調べることもできます.
図 心電計
脳波や筋電図は,心電図と同様に脳や筋肉が活動した時に出るわずかな電気を記録し機能を検査します.
超音波検査は,超音波(人間の聴覚では捉えられない周波数の高い音波)により,その伝わる性質,反射する性質を利用した画像検査で,別名,エコー検査と呼ばれています.
体外から装置を当てるだけで簡便に検査でき,人体に放射線のように「被曝」などの悪影響がなく,妊娠時の胎児の診断など安全に内部の様子を観察することができるため,最も頻繁に行われている検査です.
超音波検査のもう一つの長所は,リアルタイムに変化や動きを立体的に捉えることができることです.心臓の動き,血管内や心臓内での血流の変化,対象物の硬さなど判定,体の向きを変えたときの体液や臓器移動などの観察ができます.
図 超音波検査
呼吸機能検査では,肺が膨らんだときの大きさ(肺活量)や空気の通り道(気道)の状態を調べます.また,睡眠時無呼吸症候群の検査も行っております.
図 スパイロメータ
これら生理検査では,質の高い検査を行うために検査の仕方,検査施行者の知識と経験が非常に重要です.というのは自動的に一定の検査結果が得られるものではなく,検査施行者が異常を判定し,記録に残すためです.各検査担当の臨床検査技師や専門医が検査した記録は,専門医により確認・診断された後,検査結果として報告されています.