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血栓止血関連検査
散乱光による血小板凝集能検査

  血小板は,生体の防御反応として生理的な止血血栓において重要な役割を果たしている.しかしその反面,血小板は動脈硬化を起因とした,心筋梗塞,脳梗塞など病的血栓形成による血栓性疾患にも深く関与することが示されている.現在,これら血栓性疾患は日本人における死亡原因の上位を占めているため,その早期発見・予防を行うことは必要不可欠である.血栓性疾患では血小板機能亢進が認められるため,この機能を評価することで病態診断や治療効果の判定を行うことが可能であると示唆される.
  血小板機能の主なものは,粘着反応(傷害部位−内皮下組織への粘着),放出反応(血小板活性化後に内部顆粒からの各種物質の放出),凝集反応(血小板が凝集しあい血栓が生じる)である.現在本邦ではこのなかでも血小板凝集を測定する光透過を用いた比濁法が,臨床検査法として最も普及している.この方法は,血小板機能低下症の診断には有用であるが,血小板凝集塊の検出感度が低いこと,血栓症など機能亢進症を検出するのには不向きであった.
  この比濁法の弱点を改善すべく開発された粒子計測法は,フローサイトメーターと同様なレーザー光を用いて血小板凝集槐の光散乱の強度を測定して凝集能を測定する.このため比濁法より非常に小さな血小板凝集槐を感度良く検出することが可能である.この検査法では,血小板の自然凝集槐(凝集惹起剤を用いない状態でも凝集してしまう)を鋭敏に検出することができ,血小板機能亢進症の診断に有用であることが示されている.また,抗凝固療法と同様に抗血小板剤の薬効評価(内服による出血リスクの回避,薬剤抵抗性―レジスタンス)としても大変重要な意義があると考えられる.
  血栓性疾患に対する血小板機能検査による病態診断,抗血小板療法のモニタリングは,現段階では統一した判定基準・評価法が定まってはいないため,標準化が急がれる測定系である.これら機器を用いて臨床データを蓄積し,血栓症に対する有効な臨床検査法として確立できるよう目指している.

  • Ozaki Y, et al.: Detection of platelet aggregates with a particle counting method using light scattering. Anal Biochem. 218(2):284-94, 1994.
  • 佐藤金夫: 粒子計測法による血小板凝集能検査.検査と技術 34(11): 1088-90, 2006.

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