T.検査室の紹介
構成人数:2〜3名
遺伝子検査室は,平成6年7月に設置されました.造血器腫瘍遺伝子検査を中心に,最先端の臨床支援を行うべく,日夜努力しております.なお,細菌検査関連の遺伝子検査は感染制御部,輸血関連の遺伝子検査は輸血部,病理検査関連の遺伝子検査は病理部で実施しております.項目を下記に示しました.その他の項目として,実施可能な遺伝子検査項目を示しました.これらは,臨床支援のため当検査室が臨床各科と共同研究してきた検査項目です.
造血器腫瘍には病型に特異的な遺伝子異常が知られていることから,遺伝子検査は病型の確定診断や治療法の決定に,また,光学顕微鏡による検査では検出困難な微小残存病変(minimal residual disease:MRD)を感度良く検出できるため,各種治療後の効果判定に頻用されています.現在では,その定性的診断にとどまらず,MRDモニタリングのための定量検査が不可欠となり,Real-time PCR法にて対応しております.
最近では,胃・食道外科との連携により採取液(腹水,腹腔内洗浄液)を対象とした腫瘍遺伝子検査(CEA mRNA)を実施しております.
平成17年7月からは,薬剤応答遺伝子検査の院内実施を進めております.平成18年8月には消化性潰瘍,逆流性食道炎などの治療,ピロリ菌の除菌に使用されるプロトンポンプ阻害薬(PPI)の代謝に関与するCYP2C19遺伝子多型検査を開始しました.現在は,CYP2C19に加えて,CYP2C9,VKORC1,CYP3A5遺伝子多型検査を実施しています.本検査により薬剤代謝酵素遺伝子型,薬物代謝・動態,臨床(処方,効果,危険・有害事象の回避)が有機的に連結した個別薬物療法を実施することが可能になりました.
当検査室は,造血器腫瘍遺伝子検査を全国の国公私立大学の臨床検査部で初めて日常業務として取り入れました.それ以来,日本臨床衛生検査技師会を中心とした遺伝子検査法の全国研修会,啓蒙活動でその中心的な役割を担っております.また,将来的に先端診療支援として有望な検査の発掘・確立に努めております.
U.検査項目
1.肝炎ウィルス遺伝子検査
HCV genotype判定
2.造血器腫瘍核酸増幅同定検査
p210 BCR-ABL1 mRNA p190 BCR-ABL1 mRNA
TCF3-PBX1 mRNA ETV6-RUNX1 mRNA
RUNX1-RUNX1T1 mRNA PML-RARA mRNA
CBFB-MYH11 mRNA DEK-NUP214 mRNA
KMT2A-AFF1 mRNA KMT2A-MLLT3 mRNA
KMT2A-MLLT1 mRNA FIP1L1-PDGFRA mRNA
3.造血器腫瘍遺伝子定量検査
p210 BCR-ABL1 mRNA p190 BCR-ABL1 mRNA
RUNX1-RUNX1T1 mRNA PML-RARA mRNA
CBFB-MYH11 mRNA WT1 mRNA
4.造血器腫瘍遺伝子変異解析
ABL1 JAK2(V617F)
NPM1 DNMT3A
KIT FLT3-ITD
CALR (typeT,typeU)
MPL (W515L,W515K)
SF3B1
MYD88 (L265P)
5.悪性腫瘍遺伝子検査
CEA mRNA定量検査,K-ras遺伝子変異解析
6.薬剤応答遺伝子検査
CYP2C19 (*2,*3),CYP2C9,VKORC1,CYP3A5
7.その他,検査可能な遺伝子検査項目
7-1.固形腫瘍
APC遺伝子のDNAシークエンス解析,BRAF遺伝子変異解析
7-2.先天性疾患遺伝子解析
AT欠損症,フィブリノゲン異常症