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各検査室の紹介
血栓・止血(旧凝固)および血糖検査

 構成人数:3名(取得資格:認定血液検査技師,一級臨床検査士(臨床化学),二級臨床検査士(臨床化学),日本糖尿病療養指導士)

T.血栓・止血検査室の紹介

 生理的な止血機構の維持は,生体にとって極めて重要な防衛反応の1つです.血管の破綻が生じた場合,血管内皮下組織への血小板の粘着・凝集により一次止血栓が形成され,初期止血がなされます.それに引き続いて凝固反応が作動し,フィブリン血栓つまり強固な二次止血栓が形成されます.生じた止血栓に対しては,徐々に溶解される機構(線溶)が働き,血栓溶解による血管の再疎通がなされます.これら止血機構が適切に機能しないと,止血栓形成不全や過剰な線溶反応を制御できないなどの病態による出血傾向が生じます.
 一方,出血の逆反応である血小板,凝固の活性化反応が過剰に起きた場合には,病的な血栓形成が起きやすくなります.これには,生活習慣病を起因として動脈硬化病変を基盤に発症する脳梗塞や虚血性心疾患などの動脈血栓症や,深部静脈血栓症/肺塞栓症などの静脈血栓塞栓症が注目されています.これら血栓症の発症は日本人の死亡原因である三大死因である急性心筋梗塞を含む「心疾患」,脳卒中を含む「脳血管疾患」に深く関与しており,この早期診断・早期予防することは非常に重要な課題となっています.このように,血小板・凝固・線溶の生体内における機能を評価することは,出血性疾患・血栓性疾患の診断には非常に重要となります.
 血栓・止血検査室では,この止血・血栓領域での診断,治療モニターのために,凝固,血小板,線溶の機能の評価に関する検査を行っています(正確には,血小板数は血液形態検査室で施行しています).経口抗凝固療法を行っている患者の診療前検査や,抗凝固・線溶療法のモニタリング検査,止血異常・血栓症症例に関する個別の特殊検査の施行など,できる限りの診療支援をさせていただいております.
 血栓・止血検査室での検査は,迅速検査が可能な一般検査項目と,より詳細・特殊な検査である特殊検査項目や外注検査項目に大別されます.

I-2.検査項目
1.ルーチン検査項目
プロトロンビン時間(PT),APTT,Fbg,TT,HPT,AT,PLG,FDP-P,D-ダイマー,
TAT,PIC,F-]V,PC活性, 遊離プロテインS(PS)抗原
2.特殊検査項目
血小板機能検査:停滞率,凝集能
血小板機能検査では,停滞率はコラーゲンビーズカラム,凝集能は透過光法・散乱光法を用いた方法で行い,全例,専門的コメントを付けて結果返却しております.
凝固因子活性:U,X,Z,],[,\,],]T,]U
凝固因子インヒビター(Bethesda法),凝固因子インヒビター定性(クロスミキシング試験)

3.外注検査項目
VWF活性(リストセチンコファクター活性VWF:RCo,VWF抗原量),
抗リン脂質抗体検査(ループスアンチコアグラント(LA):希釈ラッセル蛇毒試験法(グラディポア)/免疫・血清検査:抗カルジオリピンβ2GPI複合体抗体,抗カルジオリピン抗体IgG),
t-PA・PAI複合体検査,トロンボモジュリン(TM)検査,C1-インアクチベター,α2PI
HIT抗体(血小板第4因子-ヘパリン複合体抗体:IgG,IgMおよびIgA)
AT抗原,PC抗原,PS活性

II.血糖検査室の紹介
 糖尿病,そして,その予備軍である境界型糖尿病(耐糖能異常)は,罹患者数が多く,また,合併症などによる社会的損失も大きいため,糖尿病診療の重要性は,今後,益々増していくと考えられます.糖尿病診療には,自覚症状のない病期から,早期診断,そして厳格な血糖値管理が非常に重要であり,正確な血糖検査は糖尿病診療において必要不可欠なものです.血糖検査室では,糖尿病代謝内科と密に連携させていただいた上で,血糖検査および関連項目検査を施行しております.また,糖尿病療養指導士資格を持つ検査技師が,糖尿病代謝内科医師や他のメディカルスタッフと連携し,自己血糖測定の検査指導や持続的血糖モニタリング検査などを行い,糖尿病患者様に対するチーム医療への参画も積極的に行っております(東大病院内の横断的組織・チーム医療への貢献参照).
 血糖検査の運用において特記すべきこととして,1)診療前迅速検査の施行と,2)異常値(高血糖・低血糖)が出た場合の担当医および専門医への迅速な連絡体制のシステム化があります.後者に関しては,糖尿病代謝内科の絶大なるご協力をいただいております.

II‐2.検査項目
1.血糖検査関連項目
EDTA+解糖阻止剤(NaF)入りの試験管1本で,血糖ならびに関連項目の測定が可能となっています.
HbA1c,グルコース(負荷・日内含む),インシュリン(負荷・日内含む)
C-ペプチド〈血漿・尿〉(負荷・日内含む)

2.血糖関連外注検査項目
1.5-アンヒドログルシトール(1.5AG),グルカゴン,抗GAD抗体,抗インスリン抗体

V.最近のトピックス
  検体検査総合システムについて
  2013年5月より,新たに検体検査総合システムが構築され,当検査室においても新機種の検査機器の導入や,検査運用方法を変更しました.血栓・止血検査室/血糖検査室については,従来の自動搬送システムから,迅速性を優先した自動遠心法を新規に導入し,多項目同時測定機種で運用によりリアルタイム測定を実施しています.


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