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60周年に寄せて(2015年)
呼吸機能検査室

  この10年間を振り返ると,2005年までの10年間とは逆に,教員は高井講師が毎年交替する特任臨床医と勤め,この間,滑川主任,下川主任,加藤主任の3人が引き継ぐ形で業務の刷新が行われた.
まず中央診療棟Uへの移転に伴い,スパイロメータの更新と呼吸機能レポートのペーパーレス化を行った.レポートのフォーマット作成や,同一機種2台のスパイロメータから始めた検査も,最終的に同一機種3台の体制に(この他にMRSAなど感染症症例用のスパイロメータもある)なり,年間検査10,000例に届こうとしている.現在,検査後まもなく計測値および各種波形が,JPEGフォーマットの報告書として診療端末で確認できる.
  また,機器に関しては,呼吸抵抗装置の導入および,呼気一酸化窒素測定機器の導入など呼吸機能検査の先端に追いつく努力を継続して行った.とりわけ呼気一酸化窒素測定機器は気管支喘息の診断や治療効果判定に用いられ,年間検査症例は400例を上回り,今後さらに症例が増えることが見込まれている.
昨今日本でも問題となる肥満人口の増加に伴う睡眠時無呼吸についても,ほぼ同日のレポート返却を行い,簡易型睡眠時無呼吸検査および24時間酸素飽和度モニタリングと併せて年間400例あまりの解析を行っている.
  一方で,日本呼吸器学会に呼吸機能検査を扱ったポスターなどで話題提供を行い,第60回日本臨床検査医学会学術総会のシンポジウム『呼吸器疾患診療を支える臨床検査』を主催するとともに,日本呼吸器学会主催臨床呼吸機能講習会,東京都臨床検査技師会での講演を行い,呼吸機能検査の標準化やその意義を医師および臨床検査技師をはじめとした幅広い層への浸透に勤めた.平成21年,平成22年については日本臨床検査士資格認定試験(呼吸生理学)の主任施設として,二級臨床検査士(呼吸生理学)の試験を執り行い,無事に試験を終えることができた.
  CTなど画像診断や血清マーカーの開発などにより,呼吸機能検査は新しい検査項目が増えない時代が長かったが,呼吸抵抗検査や呼気一酸化窒素検査がそれぞれCOPDの評価および気管支喘息の診断,治療効果評価のために保険収載された.今後もこれらの新しい検査の開発に遅れることなく,また呼吸機能検査計測技術の継承や系統的な教育など東大病院における呼吸機能検査室として求められる役割を果たしていきたい.

呼吸機能検査室  高井 大哉,加藤 幸子

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