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50周年に寄せて(2005年)
遺伝子検査室の紹介

横田浩充

  遺伝子検査室は,平成六年七月に設置された.当検査室は,造血器腫瘍遺伝子検査を全国の国公私立大学の臨床検査部で初めて日常業務として取り入れた.それ以来,日本臨床衛生検査技師会を中心とした遺伝子検査法の全国研修会, 啓蒙活動の中心的役割を担い,院内における臨床検査医学教育,研修にも対応してきた.遺伝子検査の三本柱である,感染症,悪性腫瘍,胚細胞系列遺伝情報検査を,適正な形で発展させるべく,日々,努力している.現在の概要は下記の通りである.
1.C型肝炎遺伝子検査
  治療後のHCV RNA量のモニタリング,定性検査にとどまらず,DNAシーケンス法によるHCV genotype判別を実施している.これは治療効果,予後判定を行う上で重要である.消化器内科,移植外科からの依頼(非保険適応であるため各科の研究費による実費支払い)を受け,先進的臨床支援と位置づけ行っている.
2.造血器腫瘍遺伝子検査
  造血器腫瘍には病型に特異的な遺伝子異常が知られている.本検査は,病型の確定診断や治療法の決定に,また,光学顕微鏡による検査では検出困難な微少残存病変を感度良く検出できるため,各種治療後の効果判定に頻用されている.現在では,その定性的診断にとどまらず,微少残存病変モニタリングのための定量検査の重要性が認識されており, Real-time PCR法で遺伝子定量にも対応している.対外的活動として,日本臨床検査自動化学会,日本臨床検査標準協議会で本検査の標準化に取り組んでいる.
3.薬剤応答遺伝子検査
  将来的な先端診療支援として有望な遺伝子検査の発掘・確立を行っている.なかでも,より安全で効果的な個別医療が期待できる薬剤応答遺伝子多型に注目している.検査部,薬剤部,ゲノム診療部などが連携し,東大病院から日本全国に発信できるようなかたちでの適正な個別薬物療法が推進できるように準備中である.
4.体質診断としての遺伝子多型検査
  倫理面,社会面で解決すべき問題がまだ残っているが,本検査の適正な普及は,きわめて重要と考えている.また,「構造改革特区の第4次提案に対する政府の対応方針」(平成16年2月20日構造改革特別区域推進本部決定)を踏まえた平成17年3月15日付けの厚生労働省医政局の各都道府県医政主管部への通知により,専門性の高い検体検査業務の受託が実施可能となった.この専門性の高い検体検査の代表が遺伝子検査とされている.本制度を通じて,先端検査の適正な普及,地域医療への貢献を推進したい.
以上,遺伝子検査の面から,東大病院の理念である診療(先端的臨床支援) ,教育,研究を行うべく三名体制で日夜努力している.

検査部の遺伝子検査項目
1.C型肝炎遺伝子検査
  HCV RNA定性
  HCV RNA定量
  HCV genotype判別
2.造血器腫瘍遺伝子検査
同定検査
  p210 BCR-ABL mRNA,  p190 BCR-ABL mRNA
  AML1-MTG8 mRNA,   PML-RARa mRNA
  CBFb-MYH11 mRNA,   TEL-AML1 mRNA
  MLL-LTG4 mRNA,    MLL-LTG9 mRNA
  E2A-PBX1 mRNA,   DEK-CAN mRNA, FLT3-ITD mRNA
定量検査
  p210 BCR-ABL mRNA,  p190 BCR-ABL mRNA
  AML1-MTG8 mRNA,   PML-RARa mRNA
  WT1 mRNA
3.薬剤応答遺伝子検査
  CYP2C9CYP2C19ALDH2ADH2NAT2
4.体質診断としての遺伝子多型検査
  ALDH2ADH2

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