新徳 隆子
臨床血液検査室のこの10年間はラボラトリーオートメーションシステム(LA)の導入に始まり,LAの更新,運用に明け暮れた.当初我々はLAに「使われていた」が,最近ようやく「使いこなせる」ように成り,LAシステムの成果として,その余力を臨床面へのサービスに向けられるようになった.
「LAの変遷」
迅速化,省力化をコンセプトに第1世代のLAが構築されたのが1994年.
このLAは,従来個々に稼動していた血算,標本作成,網赤血球数測定機器をベルトコンベアーに全てを接続する事により処理能力の向上,結果報告の迅速化,及び人員削減を目的に行われた.
1999年8月,検体増加に伴う処理能力の限界,測定機器の老朽化に伴い第2世代LAを導入.第1世代LAの使用経験を教訓に測定機器の増設,至急検体の優先搬入,ライン渋滞の回避,標本印字をシーケンスから受け付け番号に変更するなど運用面の改良を行った.その結果,更なる検体処理の効率の向上と,より正確な結果報告の迅速化が達成された.
現システムは6年目を迎え測定機器の老朽化が進んでいる現状であり,第3世代LAの構築が待たれる.青天の霹靂とも言える国立大学の独立法人化がどの様に検査部に影響を及ぼすか未知数である…・
「検査の推移」
CBC:1995年依頼件数平均500件/日,1999年700件/日,2004年1000件/日
血球像:1995年300件/日,1999年400件/日,2004年550件/日
骨髄検査:1991年6月開始,依頼件数1995年45件/月,2005年120件/月
細胞表面マーカー:1995年依頼件数40件/月,2005年70件/月
この10年間,新しい検査項目の導入はないが検査内容の充実,臨床サービスに徹底した.例えば,検査内容の充実では,2001年11月,白血病微少残存病変(MRD)検出のためのCD45ゲーティング法開始,臨床サービス面では2002年1月外来骨髄採取介助出向,2004年11月外来骨髄分類再開などがある.
近年増加している末梢血幹細胞移植(PBSCT)におけるCD34陽性細胞の測定結果の迅速化はその採取に患者さんと採取医に大いに貢献している.
「検査の現場から」
LAの導入により一般検体の処理能力,作業の省力化は以前とは比較にならないほど進んでいる.しかしながら血液検査室は省力化出来ない作業が多いのも現状である.病院の特殊性を考慮し,今後も省力化出来ない作業にこだわり臨床サービスに徹したい.