HOME
60周年に寄せて(2015年)
現在の東大病院検体検査システム

下坂 浩則

検査システム(LIS: Laboratory information system)
  昨今,どこのメーカーの検査システムでも発生源オーダリングシステムはもはや標準仕様となっている.私個人にとっては,つい先日まで検査伝票を使用して受付していたという感覚であるが,振り返ってみるともう20年が過ぎ去っていた.まさに,「光陰矢の如し」を実感する.その時代を知っている職員は,もう僅かである.検査システムにおけるデータ保存期間についても,20年前は1年間くらいでも贅沢であった.しかし,PCサーバになった現在では優に10年分を超える.初期の頃は時折小さなトラブルが発生していたWindowsサーバも,その後はすっかり安定感を増し順調に稼働している.それには,ハードウェアの信頼性・堅牢性の向上や状態監視アラート機能などのソフトウェア面が寄与するところが大きい.以前は,システム障害時には中央医療情報部(現企画情報運営部)からポケベルを鳴らして知らせてもらっていたが,現在ではシステム障害が発生するとPCサーバから担当者の携帯電話に電子メールを自動発信できるようになっている.しかし,ここ何年もシステム障害で呼び出されることは無い状態である.
  生理検査領域でもシステム化は進んでいる.初期のころは,受付情報と簡単な数値データのみの診療システム連携であったが,2006年に中央診療棟2へ生理検査部門が移転すると同時にそれまでの検査システムから生理検査システムが独立し,波形,画像,動画までもが診療システム端末に展開できるようになった.これらの検査データは,直接診療システムサーバへ送信している訳ではなく,各診療端末が生理検査サーバを参照することによって実現されている.生理検査システムは扱うデータサイズが大きいためシステム構成規模も大きくなりがちで,2013年の病院情報システム更新時には受付システムと心電図,呼吸機能のシステム更新しかできなかった.2014年になってから1年遅れで脳波検査と超音波検査システムを検査部主導で更新した.こちらも,その後は至って順調に稼働している.

自動検体検査搬送システム(LAS: Laboratory automation system)
  1999年に完成した第二世代LASは,その後2008年まで使用した.さすがに更新の数年前から,いくつかの小さな故障は発生したが,致命的なものはなかった.それまでは概算要求をおこなって搬送システム更新の予算を獲得していたが,第三世代からは総合リース方式による調達に切り替えた.割賦で一定額のリース料を支払う方式のため予算計画を立てやすく,またリース料に変更がなければ病院の負担は変わらないので更新もおこないやすいというメリットがある.この方式により,現在は第四世代目のLASが稼働している.現在では,採血ブースを18台に拡張し,遠心機や分析装置の複数台設置により,全体での検査結果報告時間(TAT: Turnaround Time)は今までで最短となっている.その反面,搬送ラインは第一世代,第二世代と比べると複雑に配置され,人の動線が分かりづらく,作業スペースも十分には取れないといった短所もある.その辺りのバランスをどのように差配していくかが今後の課題のひとつであり,現在既に第五世代に向けたワーキンググループが発足し活発な会議をおこなっている.

現在,そして次世代へ
  東大病院検査部は,これまでの教員の先生を始め先輩諸氏のご尽力により,現在の姿がある.現役世代の我々は,その方向性を見失うことなく更なる発展を遂げるため,今後も歩みを止めることなく努力していく所存である.皆様には,変わらぬご指導ご鞭撻をお願いしたい.


このページのトップへ
Copyright © 東京大学医学部附属病院検査部. All Rights Reserved.