当検査室の臨床活動では,尿検査(尿定性,尿沈渣,尿化学),髄液検査,関節液検査,精液検査を行っている.とくに尿検体,髄液検体のスクリーニング検査においては,迅速かつ質の高い検査結果を臨床へ提供すべき,日々,研鑚している.尿検査は,検体受付,検体分注,検体仕分け,尿定性検査,尿中有形成分分析(尿沈渣検査)を尿搬送ライン上で自動化され,検体前処理,測定をシステム運用している.今までに2回の尿検査搬送ラインの更新を経験し,現在の尿検査搬送ライン策定では,ISO 15189に関わる検体前処理,精度管理を十分に考慮したうえで構築した.そのISO 15189に準じた尿搬送検査ラインは国際的にも注目されていることから,2014年の国際臨床検査学会で報告した.
研究活動では日常検査の精度向上を中心に尿中落下細胞の検討,アルカプトン尿症の簡便な診断方法の開発など,2005年以降,論文(原著・総説)数29編,学会発表数69件,産学連携研究は16件に至っている.
教育活動としては学内外の技師教育活動に参加している.尿沈渣検査の技術習得には,自主的な研鑚に委ねることが多く,確立した教育プログラムが無いことが,多くの施設で問題視されている.我々は,2003年から開始した尿沈渣検査の教育方法をISO 15189(2007年)の取得時に見直し,SOPとして文章登録することで教育マニュアルを構築し,システム的な技術教育を実施した.その結果,尿沈渣検査の鏡検技術が向上したことで,希少成分や希少症例を見つかることが多くなり,これらについては,写真付別紙報告書を発行した.付加価値のある検査報告を実施したことで,臨床から高い信頼を受けている. また,定期的に腎生検カンファレンスに参加し,検査レベルの向上を計っている.
学外向け教育では,国公私立大学病院医療技術者研修は2007年と2014年の2回担当した.本研修会で取り上げた「一般検査領域の自動化」,「尿沈渣検査教育」,「尿検査におけるISO 15189」などのテーマは多くの参加施設から高い評価を得た.また,記念すべき第1回「東大臨床検査セミナー2008」を担当し,「医師の立場・技師の立場から価値ある尿検査・髄液検査を目指して」をテーマに開催した.東大臨床検査セミナーは,継続的に各検査室が担当して開催されており,今年度は,一般検査が担当する.また,大学病院検査部として,日本臨床衛生検査技師会や関連学会・団体の尿沈渣検査法,髄液検査法の研修会,啓蒙活動などの社会活動の中心的役割を果たしている.
今後も臨床,研究,教育の3つの柱をさらに発展させるべく努力を続けたい.