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ISO 15189認定検査室としての東大検査部
ISO 15189の認定と維持活動について

  東大病院検査部は2007年1月に日本で第17番目(大学病院 検査部としては第4番目)のISO 15189の認定施設になりました.2008年3月に輸血部,感染制御部に範囲を拡大して,さらに特定健診対応検査室としての認定も取得しました. その後,2016年2月に病理部,生理機能検査室が認定範囲に追加されました.

1. ISO 15189は臨床検査室の国際規格
  ISO 15189は2003年2月15日にスイスのジュネーブにある国際標準化機構(International Organization for Standardization:ISO)によって臨床検査室に特化した国際規格(グローバルスタンダード)として設定されたものです.この規格は2回の改訂を経て,現在はISO 15189:2012「臨床検査室−品質と適合能力に対する要求事項」が用いられています.ISO 15189の規格は患者の診療に不可欠な医療情報を提供する臨床検査室の品質の向上と臨床検査室の実力を認定するための国際基準を提供する目的で作成されたもので,国際的にも臨床検査室の認定基準として広く受け入れられています.

2. 認定取得の目的
  東大病院検査部は「奉仕・協調・前進」の精神のもと臨床検査に関する業務・教育・研究を行ってきています.今回,東大病院の「理念」と「目標」,さらに検査部の「理念」と「目標」を満足させ,患者さまに信頼していただける検査業務を遂行し,今後の病院の臨床検査室のより良いあり方を探求するためには,我々は自らの質の向上を効率良く行うことのできる適切な品質マネージメントシステムを導入・構築することが必要であると考えました.それらの内容は決して自己満足で無く,第三者機関による客観的な評価を得ることが重要です.その結果として東大病院検査部の実力が証明でき,病院内での存在意義を高めることができると考えました.我々はこれらことを満たすためにISO 15189の認定を取得しました.

3. 認定の範囲と対象
  現在,全ての検査業務がこの規格の認定範囲となっています.検体検査では認定は採血から測定,報告,検体の管理,アドバイスサービスに至る内容です.また,生理機能検査においても同様です.さらに,臨床医へのアドバイスサービスを担当する検査部の教員も加わって,全員参加型で認定を取得しています.輸血部,感染制御部,病理部の検査業務も認定範囲となっており,連携しながら質の高い臨床検査サービスを提供しています.

4. 認定の要点
  ISO 15189の認定の取得は,非常に厳しい第三者評価です.したがって,ごく少数のスタッフの「力」や「能力」の結集だけでは認定取得は困難で,そのような場合には認定審査で多くの是正指示や注記内容を発生させることになり,認定取得後も維持活動に多大な困難を伴うことになってしまいます.やはり認定取得を目指す検査部長や技師長の強いリーダーシップのもとで,現場で働く検査部技師や指導教員全員で認定取得を目指そうとする全員参加型でないと円滑な認定取得と維持活動には至りません.また,品質マニュアルの作成については,自施設の「実力」をよく把握して,いきなり理想を描いた内容を作成しないで,自施設の身の丈にあった実施が可能な内容にまとめ,永続的にレベルアップを目指す方向が望まれます.

5. 認定取得のメリット
  認定取得は検査の質を向上させました.すなわち,組織を構築し,日常の作業の曖昧な点を明確化し,文章化して業務の標準化を行います.さらに作業記録を残し説明責任を果たす様になります.さらに,これらの一連の作業は様々な改善を生み,結果としてリスクの軽減とコストの低減に繋がりました.こうした検査部の活動は病院内での信頼性と地位を向上させることになります.
以下の人事労務管理面,検査業務管理面,教育研修管理面で効果をもたらしました.
(1)人事労務管理面
  組織体系の明確化
  各役職の力量評価の明確化
  職員の力量と技術目標の管理が可能
  各役職の責任と権限の明確化
  検査室環境の整備・美化
  災害対策の整備
(2)検査業務管理面
  品質管理責任体制の明確化
  技術管理体制の明確化
  測定機器管理体制の充実
  測定手順書・運用マニュアルの充実
  検体採取マニュアルの充実
  外部精度管理の充実
  各種記録類の整備
(3)教育研修管理面
  新人教育研修の実施内容の明瞭化
  各種の勉強会の企画実施
  教育研修プログラムの作成

6.維持活動
  維持活動ではISO 15189の規格の要求事項について,「方法・目標・計画の立案(Plan)」→「実行(Do)」→「効果の確認(Check)」→「処置・改善(ActまたはAction)」→「方法・目標・計画の再確定,見直し(Plan)」→「実行(Do)」……のPDCAサイクルを繰り返していくことが重要です.定期的に内部監査を実施して,是正,改善を繰り返し,タイムリーにマネジメントレビューを実施して,品質の維持,発展に努めていかなければなりません.

7. 認定維持の今後について
  ISO 15189の認定を確実に維持していくことは大変です.しかし,品質保証された検査結果を臨床医に提供し,充分に信頼性を得ていることの意味はとても大きいと思われます.認定維持は,良質な臨床検査の結果が患者の診断と治療,健診での病気の予防に貢献し,また臨床治験や国際共同研究にも利用され,さらに教育面でも効果を上げ,大学病院の「診療・研究・教育そして社会貢献」に大きく役立つことと確信しています.我々は引き続いてこのISO 15189が基幹病院に普及し,臨床検査室の標準化をもたらすように,認定取得を目指し施設の役に立ちたいと考えています.

東京大学医学部附属病院 検査部
品質管理運営委員会 大久保滋夫
平成23年 10月
品質管理責任者 小野佳一
平成28年 3月

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